家を売った時の税金と控除を徹底解説|3000万円特別控除と計算方法

- マイホームを売った利益は、所有期間に関係なく最高3,000万円まで控除できる。
- 控除は売却額ではなく、取得費と譲渡費用を引いた後の利益(譲渡所得)に対して使う。
- 所有期間10年超なら、3,000万円控除に加えて軽減税率の特例も併用できる。
- 住宅ローン控除と3,000万円控除は同時に使えないため、買い替え時はどちらが得か比較が必要。
- 特例を受けるには、利益が控除で消えて税額ゼロでも確定申告が必須。
家を売った時にかかる税金と使える控除の全体像

家を売って利益が出たときの中心になる税金は、譲渡所得税(所得税)と住民税で、これに復興特別所得税が上乗せされます。
利益が出なければ、これらの税金は原則かかりません。家の売却益は「譲渡所得」として課税される仕組みです。
売却益にかかる譲渡所得税・住民税・復興特別所得税とは
譲渡所得税とは、売却益(譲渡所得)に対してかかる所得税のことです。
ここで大事なのは、給与などの所得とは分けて計算する「分離課税」だという点。給与にかかる税率とは別の税率で計算します。
住民税も同じ譲渡所得に対してかかります。復興特別所得税は、所得税額に2.1%分が上乗せされるもので、所得税とセットで支払うイメージです。
登録免許税・印紙税など売却時のその他の税金
売却時には、利益とは別に登録免許税や印紙税といった税金もかかります。
印紙税は売買契約書に貼る印紙のこと。登録免許税は、住宅ローンが残っている場合の抵当権抹消登記などで発生します。金額は大きくないので、本記事では利益にかかる税金と控除に絞って解説します。
そもそも控除でいくら税金が軽くなるのか結論
結論から言うと、マイホームの売却益が3,000万円以下なら、特別控除を使って税額をゼロにできるケースがほとんどです。
私が相談を受ける中でも、一般的な戸建てやマンションの売却では、利益が3,000万円を超えることは多くありません。だからこの控除を正しく使えるかどうかで、納税額が数百万円単位で変わります。
3000万円特別控除のしくみと適用要件
3,000万円特別控除は、自分が住んでいたマイホームを売ったとき、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける制度です。

国税庁は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」として案内しています。所有期間の長短は問われないのが大きな特徴です。
適用を受けられる人・対象になる家の条件
対象は、自分が現に住んでいる(または住まなくなって一定期間内の)マイホームです。
別荘や、税金逃れのために一時的に入居した家は対象外。あくまで生活の拠点としての住まいが条件です。
- 自分が住んでいる家屋、またはその家屋とともに敷地を売ること。
- 以前住んでいた家でも、住まなくなった日から3年を経過する年の年末までに売ること。
- 売った相手が配偶者や親子など特別な関係でないこと。
必要書類と確定申告での手続きの流れ
この特例を受けるには、売却した翌年の確定申告で手続きするのが前提です。
申告書に加えて、譲渡所得の内訳書(土地・建物用)が必要になります。住民票などで居住の事実を確認する場合もあるので、市区町村の窓口で相談する売主さんもいます。
| 書類 | 役割 |
|---|---|
| 確定申告書 | 譲渡所得を申告する基本の書類 |
| 譲渡所得の内訳書(土地・建物用) | 売却額・取得費・譲渡費用と控除額の計算明細 |
| 売買契約書の写し(売却時・購入時) | 売却額と取得費を証明する |
| 仲介手数料などの領収書 | 譲渡費用・取得費を裏づける |
親族間売買・短期居住など適用除外になるケース
配偶者・親・子など特別な関係者への売却は、この特例を使えません。
ここは見落としが多いところ。生計を一にする親族や、売却後にその家に同居する親族への売買も対象外です。控除目的で一時的に住んだだけの家も認められません。
夫婦共有・共有名義での控除の使い方
家を夫婦の共有名義で持っている場合、共有者それぞれが最高3,000万円の控除を受けられます。
つまり夫婦2人なら、合わせて最大6,000万円分の利益を控除できる計算になります。
ただし、これは各人が「居住用財産を売った人」の要件を満たすことが前提です。名義は妻だけ、というケースでは妻一人分しか使えません。共有持分や居住の実態は、国税庁の個別条件で最終確認するのが安全です。
3000万円控除以外に使える控除・特例
3,000万円控除だけでは利益を消しきれない場合や、損が出た場合に使える特例が別にあります。

代表的なのが、軽減税率の特例、買換え特例、譲渡損失の損益通算・繰越控除、そして相続空き家の特別控除です。
所有期間10年超で使える軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売ると、3,000万円控除後の利益にさらに低い税率を使えます。
6,000万円以下の部分は所得税10.21%・住民税4%、6,000万円を超える部分は所得税15.315%・住民税5%です。3,000万円控除と併用できるのが、この特例の強みです。
| 課税譲渡所得 | 所得税(復興特別所得税込み) | 住民税 |
|---|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% |
| 6,000万円を超える部分 | 15.315% | 5% |
特定居住用財産の買換え特例と併用の可否
買い替えの場合、利益への課税を将来に繰り延べる「特定居住用財産の買換え特例」を選ぶ道もあります。
ただしこれは3,000万円特別控除や軽減税率とは併用できず、どちらか一方を選ぶ形になります。私の感覚では、利益が3,000万円以内に収まるなら、無理に買換え特例を選ぶ必要はありません。買換え特例は「課税が消える」のではなく「先送りされる」だけだからです。
譲渡損失が出たときの損益通算と繰越控除
売却で損が出た場合は、一定の条件でその損を給与など他の所得と相殺できる制度があります。
これが損益通算で、1年で引ききれなかった損は翌年以降に繰り越せます。住宅ローンが残ったまま売って損が出たケースなどが対象です。利益が出たときだけでなく、損が出たときこそ申告する価値があります。
相続した空き家を売ったときの3000万円控除
相続した空き家を売る場合にも、別枠の3,000万円特別控除が用意されています。
これは被相続人が住んでいた家を相続した人が売るための特例で、居住用の3,000万円控除とは要件がまったく別です。耐震基準を満たす改修や解体など、独自の条件と期限があるので、相続物件は早めに専門家へ相談したほうがいい領域です。
住宅ローン控除と3000万円控除はどちらが得か

住宅ローン控除と3,000万円特別控除は同時に使えないため、買い替えではどちらが得か比較する必要があります。
両者はそもそも別の制度です。3,000万円控除は「売った家の利益」を減らす制度、住宅ローン控除は「買った家のローン」に応じて税金を戻す制度。混同しないことが第一歩です。
併用できない仕組みと制限の理由
売った家で3,000万円控除を使うと、新しく買った家の住宅ローン控除が一定期間使えなくなります。
これは、売却益への優遇と購入への優遇を二重に受けさせないための制限です。買い替えで両方を当てにしていると、片方しか使えず計算が狂います。
買い替え時にどちらを選ぶべきかの判断基準
判断の軸はシンプルで、売った家の利益が大きいなら3,000万円控除、利益が小さくローンが大きいなら住宅ローン控除が有利になりやすいです。
正直に言うと、これは数字を入れてみないと結論が出ません。私が相談を受けるときも、売却益の見込み額と新居のローン残高、それぞれで何年分の節税になるかを並べて比較します。利益がほとんど出ていないなら、迷わず住宅ローン控除側を勧めます。
控除を使った税金の計算とケース別シミュレーション
税金は、売却価格から取得費と譲渡費用を引いて譲渡所得を求め、そこから控除を引いた額に税率を掛けて計算します。

順番は、①譲渡所得を出す、②特別控除を引いて課税譲渡所得を出す、③税率を掛ける、の3ステップです。
譲渡所得の計算と取得費・譲渡費用の出し方
譲渡所得は「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で求めます。
取得費は、その家を買ったときの金額に、購入時の仲介手数料や登記費用などを足したもの。建物分は減価償却で目減りさせます。譲渡費用は、売るときにかかった仲介手数料や印紙代などです。
- 取得費に含められるもの:購入代金、購入時の仲介手数料、登記費用、一定のリフォーム費用など。
- 譲渡費用に含められるもの:売却時の仲介手数料、売買契約書の印紙代など。
- これらを漏れなく計上すると譲渡所得が下がり、税金も下がる。
取得費が不明なときの概算取得費(5%)の扱い
購入時の契約書が見つからず取得費が不明なときは、売却価格の5%を取得費とみなして計算できます。
ただし、これは実際の取得費が分かる場合と比べてかなり不利になりがちです。古い家ほど契約書が見つからず、5%しか引けないと利益が大きく出て税金が膨らみます。購入時の書類は、売る前に必ず探してください。
長期譲渡所得と短期譲渡所得で変わる税率
税率は所有期間で変わり、5年を境に長期と短期に分かれます。
売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えれば長期、5年以下なら短期。短期のほうが税率は高くなります。さらに10年を超えると、前述の軽減税率が使えます。
| 区分 | 所有期間(売却年1月1日時点) | 税率の傾向 |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 税率が高い |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 税率が低い |
| 長期+軽減税率 | 10年超のマイホーム | さらに低い税率を併用可 |
数字でわかる節税ケース別の試算
具体的な数字で見ると、3,000万円控除の威力がよく分かります。
たとえば、3,000万円で買ったマイホームを5,000万円で売り、譲渡費用が200万円だったとします。譲渡所得は5,000万円−(3,000万円+200万円)=1,800万円。ここに3,000万円控除を当てると、課税対象はゼロになり、税金はかかりません。
一方、利益が4,000万円出たケースでは、3,000万円を引いても1,000万円が残ります。この1,000万円に税率を掛けるので、所有期間10年超かどうかで税額が変わってきます。利益が3,000万円を超えるなら、軽減税率の併用を必ず検討してください。
| 売却益(譲渡所得) | 3,000万円控除後 | 課税の有無 |
|---|---|---|
| 1,800万円 | 0円 | 課税なし |
| 3,000万円 | 0円 | 課税なし |
| 4,000万円 | 1,000万円 | 残額に課税(軽減税率の検討余地あり) |
確定申告と税金の納付・売却前のチェックリスト
特例を使う場合は、売却した翌年の確定申告期間内に申告し、所得税を納めるのが基本の流れです。

申告を忘れると控除が使えず、本来ゼロのはずの税金を払うことになりかねません。
確定申告のスケジュールと期限・e-Taxでの提出
確定申告は、売った年の翌年2月16日から3月15日ごろが提出期間です。
税務署に行かなくても、e-Tax(国税電子申告)を使えば自宅から提出できます。譲渡所得の内訳書をそろえておけば、入力自体はそれほど難しくありません。早めに書類を集めるほど、申告期限間際に慌てずに済みます。
税金の納付時期と延納(分割)の可否
所得税は申告期限と同じ3月15日ごろまでに納めるのが原則です。
住民税は、申告内容にもとづいて後から通知が届き、その年の6月以降に支払う流れになります。所得税には一定の条件で延納(分割)の制度もあるので、一括が厳しい場合は税務署に相談してください。
ふるさと納税や社会保険料への影響
売却益が出ると所得が増えるため、ふるさと納税の控除上限や、国民健康保険料などに影響することがあります。
ここは盲点になりやすい部分。譲渡所得が分離課税でも、自治体の保険料算定に反映される場合があります。大きな利益が出る年は、ふるさと納税の上限額を例年通りで計算すると過剰になることがあるので注意してください。
売却前の確認事項と税理士に相談すべきタイミング
売る前に取得費の資料を確認し、どの特例を使うかの方針を決めておくのが理想です。
- 購入時の売買契約書・領収書がそろっているか確認する。
- 自分のケースが3,000万円控除の対象か、適用除外に当たらないか確認する。
- 所有期間が10年を超えるか(軽減税率の対象か)を調べる。
- 買い替えなら住宅ローン控除との比較を済ませておく。
家を売った時の税金と控除でよくある質問

最後に、相談現場で実際によく聞かれる質問に答えます。
よくある質問
私が一番伝えたいのは、税金がゼロでも申告だけは必ずすること。控除は申告して初めて使えます。まずは今日、購入時の契約書がどこにあるか確認するところから始めてください。
